【映画】8月のクリスマス
最近は、別の場所で映画評を書くようになったので、こちらではアジア映画以外で、映画評を書くのは久しぶりかも(この映画もオリジナルは韓国映画ですが)
なぜ久しぶりに映画評をここに書こうと思ったのかといえば、ネット上での評判がイマイチみたいなんですよ。「まぁ、いいんじゃない」くらいの評価まで。
だから、ちょっとは高い評価をした意見も書いといた方がいいのかなと。
さて、今回は長崎俊一監督の「8月のクリスマス」です。現在公開中の「四月の雪」のホ・ジノ監督の同名映画を日本でリメイクしたものです。
個人的にオリジナル版への思い入れが強く、リメイクに際しては、かなりの不安がありました。
主演は山崎まさよしで、本来は役者が本業ではない人だし、ヒロインの関めぐみは、映画の主演が今回が2作目と経験が浅い。主演二人の演技が、そのまま映画の出来に影響する映画だけに、この点は本当に不安でした。
また、ヒロインの職業が変更されてるみたいだったので、「変更点も多いのかなぁ」という不安もありました。
結論から言いますが、すべて杞憂。
主人公は、自分の運命を受け入れて生活する。この役に必要な「静」を山崎まさよしが、自然体で好演。
ヒロインに求められるのは、主人公とは逆に「生」を感じさせる人。それを関めぐみが、生き生きとした演技で、これまた好演。変に他の映画に出演してないので、まだイメージが固まっていなかったのでも良かった。
ヒロインの職業変更については、「まいりました」というしかない。
この映画に大切な季節感を出すのに、「臨時教員」という職業はうってつけ。特にタイトルにある「8月」を意識させやすい。
また、それ以外には、これといった大きな変更点もなく、オリジナル版への愛情を感じる。
さて、肝心のストーリー。
主人公は病に冒され、やがて死んでいく自分の運命を受け入れ、そのため「もう誰かを好きになる事はない」という、写真館の店主。
ヒロインは、その写真館の近所の学校で臨時採用の教員をやっており、ちょくちょくその写真館に訪れるようになる。
まぁ当然、映画的に二人は惹かれ合うのですが、この映画にはそういう描写が一切ありません。
キスシーンもなければ、お互いが「好き」とも「愛している」とも言いません。
おそらく、主人公の二人も、物語の途中まではお互いの気持ちに気付いていません。
その距離感がすごく重要なんです。どちらかが「好き」って言ってしまったら、この映画の持っている、切なさや哀しさがすべて吹き飛んでしまうでしょう。
お互いの気持ちがハッキリしない点も含めて、この映画はあえて観客に対して、いろいろな説明を省略しています。主人公が重い病気なのは理解できますが、その病名すら説明されません。
そういう意味では、初見の人にはちょっと分かりづらいかもしれません。
でも、説明を省略しているのは、説明する必要がないからなんです。むしろ省略していることに意味があるのです。
お互いの気持ちがハッキリ分からないことに意味があるのですから。
とにかく、見ていてとても気持ちのいい映画です。
今年見た映画では、今のところ1番。
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